目標管理「OKR」をわかりやすく解説|具体例や国内の導入事例を紹介
せっかく目標管理制度を導入しても、うまく機能していないと悩んでいる経営者の方も多いのではないでしょうか?
社員のやる気アップと会社の成長を目的とした新しいスキーム「OKR」について解説します。
OKRとは
OKR(Objective and Key Results)は1970年代にインテルで誕生した目標管理のための理論です。
ひとつの目標(Objective)と、それを達成するために複数の指標(Key Results)から構成されています。
目的は「モチベーションの向上」
目標管理のための理論は複数ありますが、OKRは社員のモチベーション向上を目的としています。
そのため達成度を人事評価と結びつけることはしません。
100%の達成を目指さない
OKRの大きな特徴は「100%の達成を目指さない」ということです。
詳細は後述しますが、基本的には60〜70%程度の達成で「達成」とみなすような数値設定を行います。
設定のポイントと具体例
実際に「目標」と「指標」を設定する際のポイントを解説します
「目標」はシンプルでチャレンジングなもの
OKRにおける目標(Objective)は、できるだけシンプルなものを設定します。
・定性的であること(数値ではない)
・企業にとっての最重要課題であること
・1〜3ヶ月程度で達成できるもの
・メンバーにとってチャレンジングであり、やりがいを感じられるもの
ここでは、たとえば「顧客満足度を上げる」「過去最高売上を達成する」などが該当します。
「1〜3ヶ月程度」という比較的短い期間を設定するのは、短期間に集中して取り組むためです。また方針を修正したり微調整を加えたりすることも容易になります。
「指標」は「難しいが不可能ではない」レベルに
次に目標を達成するための指標(Key Results)です。目標と異なり、数値で表せられるものにします。
・定量的であること(数値で測ることができる)
・2~5個程度
・「頑張れば達成できそう」な難易度(ストレッチ目標)
たとえば顧客満足度であれば「アンケートの満足度80%を超える」「90%の問い合わせに対して12時間以内に返信する」などが考えられます。
指標設定で重要となるのが難易度で、OKRでは「難しいががんばれば達成できるかもしれない」というレベルに設定します。
MBOやKPIとの違い
目標管理の理論でOKRと似ている「MBO」と「KPI」と比較してみましょう。
MBOとの違い
MBO(Management by objective)は「目標による管理」で、経営学者として知られるピーター・ドラッガー氏が提唱しました。
MBOはOKRと同じく目標の達成度合いによって評価を行いますが、会社によって導入の目的も手法も様々です。
MBOとOKRの大きな違いは、設定した目標の共有範囲と期間です。
MBOでは上司と本人で共有されることが一般的ですが、OKRは会社の最優先課題が念頭にあるため全社で目標が共有されます。
また達成期間はMBOでは1年、OKRでは四半期と、OKRのほうが短く設定されます。
▼詳細はこちら
- MBOとは?従業員のやる気を引き出すコツと面談のポイントを解説
- MBOとは「目標管理」のことです。目標によって人事評価を行う企業は少なくありませんが、実はやり方を間違えると意味のないものになってしまいます。MBOで従業員のやる気を引き出すためのポイントや面談のコツを解説します。MBOとはMBO(Management by objective)とは「目標管理」です。個人やグループごと
KPIとの違い
KPI(Key Performance Indicator)は業績目標の指標のことで、日本語では「重要業績評価指標」と呼ばれます。
OKRと同じく指標を設定しますが、KPIでは指標の達成度として100%の達成を目指します。
たとえばOKRでの「月間売上1億円」は「頑張れば達成できるレベル」なので、もし7,000万円でも達成とみなします。しかしKPIで同じ指標を設定した場合は「必ず達成しなければならないレベル」という扱いになり、下回れば未達です。
OKRのメリット
・最重要課題を全社で取り組むことができる
・仕事の効率化につながる
・上昇志向が生まれる
最重要課題に全社で取り組むことができる
OKRは最重要課題を目標として最初に設定し、また最終的な目標として掲げています。自分や自分のチームが何をなすべきなのか、目標を意識して仕事に取り組むことができます。
仕事の効率化につながる
短期間での達成を目指すため業務の優先順位をつけ易くなる点もメリットとなります。優先順位をつけられると今取り組むべきことが明確になるため、余計な回り道をすることがなくなります。
上昇志向が生まれる
数値指標を設定する際に、100%の達成を目指すとどうしても「達成しやすい」指標になりがちです。逆にトップダウンで高すぎる数値を設定すると、社員には諦めの気持ちが生まれます。
しかしOKRでは60〜70%の達成を目指すので、現状より少し上の数値を目標値として設定しやすくなります。
OKRの導入事例
OKRを実際に導入している国内外の企業を紹介します。
先進的な制度を取り入れてきたGoogleでもOKRが活用されています。
Googleでは「OKRを個人の評価に結びつけない」という姿勢を一貫して採用しています。OKRではチャレンジングな指標を立てることを求めており、評価に結びつけてしまえばどうしてもより簡単に達成できる指標となってしまうためです。
あくまでコミットするのは会社の成長であり、そのための目標や指標であるという意識が、OKRの効果を発揮させるための重要な考え方と言えるでしょう。
花王
花王グループは2021年に「OKR」の導入を発表しました。同グループでは、OKRを「ありたい姿や理想に近づくための高く挑戦的な目標」と位置づけ、会社が社員のチャレンジを後押しし、社員ひとりひとりが想いやアイデアを発信できる企業グループを目指しています。
同じタイミングで人事評価の刷新も発表していますが、Googleと同じく、人事評価とOKRの制度を結びつけてはいません。
さいごに
OKRは目標管理の理論の中でも新しい考え方です。現状に妥協せず高い指標を目指すため、社員の力を引き出すことに役立つでしょう。