扶養家族とは? 範囲や条件、履歴書に記載する場合の数え方を解説
年末調整の書類や就職・転職活動時の履歴書に「扶養家族」を記入することがあります。
「配偶者や子供」というイメージはあるものの、正確に条件を知っている人は少ないのではないでしょうか。
この記事では、扶養家族に該当する範囲や条件、履歴書に書く場合について解説します。
扶養家族とは
扶養家族とは、簡単に言えば「自分が生活を経済的に支えている相手」のことです。
税制と健康保険で定義が違う
税制上の扶養家族(「扶養親族」と呼びます)と健康保険上の扶養家族(「被扶養者」と呼びます)は定義が異なります。
細かい規定があるので、書類などに扶養家族を記載する際はどちらの定義が適用されるのか確認しましょう。
履歴書に書くのは「健康保険の定義」が一般的
履歴書の「扶養家族」の欄に記載する場合は、健康保険の定義で記載することが一般的です。
細かい条件は後述しますが、健康保険の場合は同居の有無を問わず「現在、自分が生活を支えている人」が対象です。
扶養家族の条件
扶養家族の条件について確認しましょう。税制上の定義と健康保険上の定義をそれぞれ解説します。
MEMO
扶養家族の条件として「3親等以内」など、親等での条件があります。親等の数え方は家系図を想像するとわかりやすく、家系図の上下が1親等、横が2親等と数えます。
たとえば「自分の親」は家系図では自分よりひとつ上の段なので1親等、祖父母はもうひとつ上なので2親等です。下にも同じで、子供は1親等、孫は2親等となります。
「自分の兄弟姉妹」は2親等です。これはまず「自分から親」で1親等、「親から兄弟姉妹(親から見て子供)」で1親等、足して2親等という考え方です。
また、従兄弟(従姉妹)は4親等で、配偶者は0親等となります。
税法上の定義
税制上の扶養家族については、以下の観点から判断します。
- 親等の範囲
- 生計が同じかどうか
- 対象者の年収
- (事業主登録をしている場合)事業専従者かどうか
詳しく見てみましょう。
(1)6親等内の血族および3親等内の姻族であること(※配偶者を除く)
血族とは家系図における「自分側の親族」のことです。6親等の範囲は非常に広く、はとこ(親同士が従兄弟)や従兄弟の孫まで含みます。
いっぽう姻族とは「配偶者側の血族」のことで、いわゆる「義実家の親族」です。
3親等なので上の世代は配偶者の曽祖父母(本人から見て義理の曽祖父母)まで、下の世代はひ孫までが含まれます。
血縁関係はありませんが、いわゆる「里子」や「市町村長から養護を委託された老人」もその他の条件を満たす限り扶養家族に該当します。
(2)本人と生計が同一であること
本人と同じ財布で生活していれば、別居や別世帯でも構いません。たとえば別居している両親でも、生活費を仕送りしている場合は該当することがあります。
また同居している場合は原則として同一とみなされますが、完全に生活費を分離している場合などは当てはまりません。
(3)認定対象者の年間所得が48万円以下であること
給与のほか、退職手当や山林や不動産の所得、株式などの利益を含むすべての所得の合計が「48万円以下」であることが条件です。
なお収入が給与のみの場合は、給与収入が103万円以下であれば該当します。
(4)青色申告もしくは白色申告の事業専従者でないこと
青色申告の場合、事業専従者であってもその年に給与の支払いを受けていなければ扶養家族に該当します。
MEMO
控除対象は16歳以上
税制控除の対象になるのは「扶養親族のうち、その年の12月31日時点で16歳以上の人」のみです。
健康保険上の定義
健康保険においては、本人(健康保険被保険者)からの親等の範囲によって条件が異なります。ここでは本人を「被保険者」として解説します。
直系尊属、配偶者、子、孫、兄弟姉妹の場合
- 主として被保険者に生計を維持されていること
直系尊属とは、自分から見て家系図の上に位置している人のことです。親、祖父母などが該当します。上の範囲は決まっていないので、曽祖父母、曽々祖父母…と存命である限り扶養家族の範囲になります。
直系尊属、配偶者、子、孫、兄弟姉妹の場合は、被保険者に生計を維持されていれば扶養親族として該当します。
同居の有無は無関係なので、たとえば一人暮らしをしている子供なども含まれます。
3親等以内の親族の場合 (※直系尊属、配偶者、子、孫、兄弟姉妹を除く)
- 被保険者と同一の世帯であること
- 主として被保険者に生計を維持されていること
「3親等以内の親族」は甥姪や叔父叔母、配偶者の親や祖父母などが該当します。姻族も3親等以内であれば良いので、配偶者の甥姪や叔父叔母も含まれます。
この範囲の人は、被保険者と同一の世帯であることが必須です。たとえば配偶者の両親と別居している場合、当該「配偶者の両親」は被保険者の扶養家族には該当しません。
MEMO
事実婚関係の配偶者について
事実婚関係にある配偶者、およびその両親や子についても扶養家族として該当します。本記事では解説を割愛します。
「生計を維持されている」とは
生計維持の判断は、原則として以下の基準によって行われます。
- 認定対象者の年収が130万円未満であること
- 被保険者の年間収入の2分の1未満であること
年収基準の130万円未満は、認定対象者が60歳以上または障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満となります。
また被保険者の2分の1以上の収入がある場合でも、被保険者の収入より低い場合は該当する場合があります。
まとめ
扶養家族の定義は税制上、健康保険上で異なります。いずれも主に以下の3つの観点で扶養家族に該当するかどうかを判断します。
- 親等の範囲
- 認定対象者の年収
- 同居の有無
扶養控除を受ける条件にもなりますので、判断に迷う場合は会社の総務担当者に確認するなどして間違いなく記載するようにしましょう。