「アサーション」とは? 部下と上手に話をするための具体例
マネジメントの場面で「アサーション」という言葉が聞かれるようになりました。
アサーションはコミュニケーションの考え方のひとつで、求められる上司像やパワハラの顕在化など、部下とのコミュニケーションが変化する中で注目されています。
アサーションとは
アサーションとは「相手の意見に耳を傾け、かつ自分の意見を主張する」というコミュニケーション方法です。
人事労務用語として、以下のように紹介されています。
“「アサーション」(assertion)とは、より良い人間関係を構築するためのコミュニケーションスキルの一つで、「人は誰でも自分の意見や要求を表明する権利がある」との立場に基づく適切な自己主張のことです。
引用元:Weblio辞書 https://www.weblio.jp/content/アサーション
基本姿勢は「対等な立場で対話をする」こと
上下関係による規律を重んじる会社や、先輩や上司の叱咤激励で成長してきた方の中にはアサーションの考え方に違和感を持つ人もいると思います。
しかしアサーションは相手を甘やかしたり、相手に過度に配慮したりするものではありません。
むしろ「上手に自分の意見を伝える」ためのものであり、そのために「相手の意見にも耳を傾ける」ことを大切にしています。
アサーションで仕事がしやすくなる
部下や上司、他部署など、利害関係者とのコミュニケーションにおいてアサーションを心がけることで、仕事がしやすくなります。
アサーションで得られる効果
アサーションでは以下のような効果が期待できます。
・対等な意見交換ができる
・部下からの相談や報告がスムーズになる
・「No」を伝えやすくなる
アサーションでは相手の意見に耳を傾けることを重視しています。「話を聞いてくれる」と部下が感じれば、自然と相談や報告はスムーズになるでしょう。
相談によってミスを未然に防ぐことができ、またミスが起きても報告が早ければ問題が大きくなる前に対処することが可能です。
また相手の立場に配慮しながら自分の意見を主張することができるようになるため、他部署や上司からの理不尽な要求を断りやすくなります。
心理的安全性につながり生産性が上がる
アサーションによるコミュニケーションができるようになると部下の「心理的安全性」が上がり、チーム全体の生産性向上も期待できます。
心理的安全性とは、自分の考えや感情を安心してメンバーに伝えることができる状態のことです。
経営者を対象にしたアンケートでは、心理的安全性を高める施策を行っている経営者の9割が「生産性の向上を実感している」と回答しました。
参考:株式会社カルチャリア
3つのコミュニケーションタイプ
まずは自分のコミュニケーションの傾向を知りましょう。以下の3つのタイプがあります。
・アグレッシブ(アクティブ)
・ノン・アサーティブ
・アサーティブ
自分の主張を強く出す人は「アグレッシブ」タイプ。攻撃的という意味があり、時に相手の非を強く責めてしまう傾向があります。
逆に自分の主張ができないのが「ノン・アサーティブ」タイプの人。理不尽なことも受け入れてしまいがちで、自分の許容量以上の仕事を受け持ってしまったり、ストレスを溜めこんでしまったりしまいます。
両者の中間が「アサーティブ」タイプで、相手に配慮しつつ自分の意見を伝えることができます。
アサーションの具体例
具体的にアサーションを取り入れた言い方の例を紹介します。
「私」を主語にする
相手を主語にするのではなく、自分を主語にして話してみましょう。
相手が何をしてくれたら自分が嬉しいのか、また自分がどういう状況に対して困っているのか、自分の気持ちや自分の状態を伝えましょう。
(例)「どうして《あなたは》勝手に判断するのですか?」
→「取り掛かる前に一言伝えてくれると《私は》嬉しいな」
MEMO
主張が苦手という人(ノン・アサーティブタイプ)も、この方法を使うと自分の意見を言いやすくなります。「〜していただけると助かります」など、自分を主体にしてみましょう。
お願いの表現を使う
命令(「〜しなさい」)や禁止(「〜するな」)という言い方は、言葉自体が攻撃的です。
お願い(「〜してください」)や意見(「〜してほしい」)という言葉に変えるだけで、相手への圧力を減らすことができます。
(例)「もっと早く報告しろ」
→「もし難しいと思ったら、その段階で相談してもらえますか」
ポジティブな代替策を提示する
どうしても断らないといけない場面が出てきた場合も、代替案を提示することで「完全に否定しない」という姿勢を見せることができます。
(例)「期限まで2日では対応できません」
→「別にA社案件もあるので、2日では対応できません。3日ではどうでしょうか」
MEMO
断らざるを得ない理由を付け加えると、相手も納得しやすくなります。また代替案があると断るストレスも減るため、断るのが苦手という人にもおすすめです。
ボディランゲージを意識する
言葉だけでなく、仕草もコミュニケーションの重要な要素です。
たとえば腕組みをしていると、本人がそのつもりはなくても威圧的な態度に感じられます。そうなるといくら言葉を選んでも相手は萎縮してしまい、「意見を聞いてもらえた」という納得感にはつながりにくいでしょう。
・腕組みをしない
・意識的に口角を上げる(笑顔をつくる)
・視線を相手に向ける
・うなづく
これらのことを意識するだけで、傾聴の姿勢を示すことができます。
まとめ
アサーションは自分の主張を相手に気持ちよく受け入れてもらうためのコミュニケーション術で、ビジネスだけでなく家庭や友人関係など様々な場面で効果が期待できます。
言葉自体は聴き慣れないとしても、本質的には「対等の立場で相手と対話する」というコミュニケーションの基本といえるでしょう。
ぜひ今日から少しずつ、取り入れてみてください。