レイオフとは? 解雇、一時帰休との違いや意外なメリットを解説
2020年11月、Twitter社を皮切りにテック企業で次々と大規模な人員削減が発表されました。
その際に「解雇」ではなく「レイオフ」という言葉が使われ、戸惑った方も多いのではないでしょうか。
勢いに乗ってるグローバル企業が大規模なレイオフしてて、何が起こっているのか、これから何が起こるのか、私には見当もつかないけど、なんだか怖い…
引用元:Twitter
Twitter上では上記のように、不安になる声もありますが、実はレイオフには意外なメリットも。解雇や一時帰休との違いと合わせて解説します。
レイオフとは
「レイオフ」とはどういうものなのか、「解雇」や「一時帰休」と比較してみましょう。
レイオフ=一時解雇
レイオフとは、再雇用を前提として一時的に従業員を解雇することです。
“企業が、景気変動や不況に伴い業績悪化した際、一時的な人件費抑制のために自社の都合で労働者の再雇用を前提とした一時的な解雇をする事。
引用元:コトバンク
ただ近年では再雇用を前提としない人員整理としての解雇に対しても、「レイオフ」が使われることもあります。
整理解雇との違い
整理解雇(いわゆる「リストラ」)とレイオフの最も違う点は、再雇用の可能性です。
解雇には「懲戒解雇」「普通解雇」「整理解雇」の3種類があり、レイオフは人員整理を目的とするため「整理解雇」の1種です。
整理解雇では、その後の再雇用については全く白紙です。もちろん再雇用される可能性はありますが、解雇時点で後日の再雇用を約束することは基本的にはありません。
なお整理解雇とレイオフはどちらも解雇であるため、日本国内の企業が実施する場合は労働基準法上の解雇規制を受けます。
一時帰休との違い
レイオフと一時帰休との違いは「雇用関係の有無」です。
レイオフは一時的とはいえ解雇であるため、雇用契約は一旦終了します。いっぽう一時帰休は、雇用契約は存続したまま自宅待機(休業)させるものです。
また一時帰休では休業中に一定の手当(休業手当)を支給することが義務付けられていますが、レイオフは休業ではないので休業手当の支給は必要ありません。
なお手当の支給は国によって条件が異なり、たとえばイギリスでは4週間以上に及ぶ場合は所定の補償金が必要です。
レイオフ(一時解雇) | 解雇(整理解雇) | 一時帰休 | |
雇用関係 | 終了 | 終了 | 継続 |
再雇用の有無 | 有り | 無し | - |
解雇規制の適用 | 有り | 有り | - |
期間中の手当の支給義務 | 無し※1 ※2 | 無し※2 | 有り |
※1 国によって支払い義務あり
※2 通告から1ヶ月以内に解雇する場合は解雇予告手当の支払い義務あり
レイオフのメリット
レイオフにはネガティブな印象がありますが、企業側、労働者側双方にメリットもあります。
企業側
レイオフには解雇や一時帰休にはないメリットがあります。
経験でしか得られないスキルやノウハウを保持できる
レイオフは再雇用が前提となるため、企業内に蓄積されたノウハウを完全に手放すことにはなりません。
対象となった従業員がレイオフ期間中に転職してしまう可能性もありますが、整理解雇に比べればそのリスクは低いでしょう。
大幅に人件費を削減できる
人件費の調整は派遣社員や非正規雇用の従業員で行うことが一般的です。しかし人件費の大半は正規社員であり、そもそも非正規社員が少ないという企業もあります。
レイオフは正社員を解雇するので、一気に人件費を抑えることが可能です。
労働者側
レイオフは労働者側にもメリットがあります。
再雇用の可能性を残したまま転職活動ができる
転職を考えていた人にとっては、レイオフは転職のチャンスとして捉えられます。
レイオフについての情報交換をしてるチャンネル、2万人以上が参加していて、結構前向きに転職先などの情報交換をしている。 ニュースではかなりネガティブに報道されてるけどそんなことないんだな。
引用元:Twitter
レイオフであれば、解雇と異なり「企業が手放したがらない一定のスキルをもった人材」という見方をされます。
従業員を解雇できるシンガポール、 一気にレイオフが始まり出しています。 人材紹介、Linkedin、求人メディアから 「レイオフされたこういう人がいるけど採用どうですか?」 と連絡がたくさんきます。 転職希望者に対し採用先が無いとのことで、 積極採用の企業はチャンスですね。
引用元:Twitter
そのため人材市場では大きなレイオフがあると、同業他社への案内やスカウトが増えると言われています。
うまく条件が合致すれば転職でキャリアアップを図れますし、そうでなくても元の会社の業績が回復すれば再雇用されます。そのため解雇よりも心の余裕をもった活動をすることが可能です。
事例
実際にレイオフの事例を紹介します。
日本でのレイオフ事例
日本でのレイオフの事例はほとんどありません。
その理由は、レイオフに解雇規制が適用されるためです。
先述の通りレイオフと整理解雇には異なる点があるものの、現行法では「レイオフ=整理解雇の一種」と捉えられます。
解雇されると従業員の収入が断たれてしまうため、容易に解雇できないように法律で条件が決められています。中でも整理解雇は厳しく制限されており、単に「業績が悪いため人件費を削減したい」というだけでは実施できません。
そのため日本で人件費の削減を行う場合はレイオフではなく、非正規社員の契約更新の停止や一時帰休の実施が一般的です。
アメリカでのレイオフ事例
アメリカは従業員保護の規制が日本に比べて緩いため、レイオフは珍しいことではありません。テック企業でのレイオフが続いていますが、古くは自動車製造業などで実施されてきました。
・チェイナリシス(Chainalysis)(2019年)
・ゼネラルモーターズ(GM)(2020年)
・Microsoft(2022年)
・Twitter(2022年)
・Amazon(2022年)
Microsoft社は2016年、2018年にも大規模なレイオフを実施しています。また現地法人に対するレイオフが行われる場合もあり、2020年にはGM社がタイ工場を売却、同工場に勤務する全従業員がレイオフされました。
まとめ
レイオフについて言葉の意味や事例を紹介しました。
・レイオフは再雇用を前提とした一時解雇
・企業側、労働者側にとってメリットもある
・日本では解雇規制を受けるため一般的ではない
日本では一般的ではないものの、現在解雇規制の緩和の声も出ています。レイオフをチャンスにできるかどうかは、日々の自己研鑽に懸かっているのではないでしょうか。