ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用の違いとは? 向いている企業の特徴
近年、働き方改革の一般として「ジョブ型雇用」に注目が集まっています。
対義語である「メンバーシップ型雇用」は日本型といわれることも多く、ジョブ型雇用への転換を促す声が高まっているのは事実です。
しかしジョブ型雇用は全ての企業に必ずしもマッチするものではありません。
違いを理解して自社に最適な方針を選びましょう。
ジョブ型雇用とは
ジョブ型雇用とは「職務内容、勤務条件を明確にした雇用」のことです。
「個人が持つ能力やスキル」と会社に存在する「仕事(ジョブ)」をマッチさせるイメージで、経理事務であれば経理事務、法人営業であれば法人営業、と業務を限定して契約します。
中途採用のデザイナーやITエンジニア、医師、看護師、経理、人事など専門職採用では比較的多く見受けられます。
基本的には限定的な範囲の業務のみなので、業務の評価を行いやすいというメリットがあります。また行うべき業務を双方同意の上で採用するので、採用ミスマッチが起こりにくいという利点もあります。
いっぽう、業務を限定しているために異動や転勤を行うことは想定されていません。新規事業の立ち上げメンバーを社内から募るなど、機動的な人事が行えないというデメリットもあります。
メンバーシップ雇用とは
メンバーシップ型雇用とは「業務範囲を流動的にとらえた、会社のメンバーとしての雇用」のことです。入社後の適性に応じて配置転換することを想定しており、日本の従来の雇用タイプといわれます。
人材が不足した部門へ社内から補充を行なったり、様々な部署を経験させて業務適性を判断したりするなど機動的な人事が可能になります。
しかし業務とは関係のない感情による評価がされてしまったり、入社後に希望と違う仕事を命じられて退職するミスマッチも起きやすかったりというデメリットがあります。
ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用の違い
ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用の違いを、トピックごとに比較してみます。
■仕事内容、評価基準の違い
ジョブ型雇用では、専門的なスキルや知識の度合いによって評価が決まります。チームで仕事をする場合にコミュニケーションなどが加味されることはもちろんありますが、基本的には個人の業務能力が重視されます。
メンバーシップ型雇用では、業務範囲を限定しないため専門スキルがなくても別の部分で評価されることが少なくありません。また特別な知識がなくても、複数の部門を経験することによるゼネラリストとしての評価基準もあります。
■採用基準の違い
ジョブ型雇用では、専門知識やスキルの高さが採用基準となります。将来ののびしろよりも採用時点でのレベルの高さが求められる傾向があります。
メンバーシップ型雇用では、採用時点でのスキルよりも配置転換への順応性の高さや今後の成長への期待値が基準となります。既存社員とのバランスもジョブ型よりも重視されやすい傾向があります。
■人材流動性の違い
人材流動性とは、解雇や転職のしやすさです。日本ではジョブ型、メンバーシップ型の違いによって解雇に差はありませんので、主に転職の視点から解説します。
ジョブ型雇用では人材流動性が高くなります。これはジョブ型雇用による人材のスキルの多くは職種や業種に紐づくものであり、同じスキルを活かせる会社がほかにも多数存在するためです。
メンバーシップ型雇用はジョブ型に比べて人材流動性は低くなります。ひとつの社内で長く勤めることを前提としているため、転職するよりもひとつの会社に止まり続けたほうが給与などの恩恵を受けやすいという面があるためです。
近年では転職も一般的になっているため、メンバーシップ型雇用の企業でも人材流動性が高くなってきています。
ジョブ型雇用が向いている企業や職種
以下のような企業では、ジョブ型雇用がうまく機能する可能性があります。
ジョブ型雇用が向いている企業
- 配置転換や異動がない
- 高待遇を用意できる、もしくは事業に魅力がある
- 社内教育に費やせるリソースがない
ジョブ型雇用では採用時点でハイレベルな人材を確保できるので、入社後の教育に割くリソースがない場合に有効です。
ただしそのような人材はほかに高待遇な会社があればいくらでも転職できるので、つなぎとめておくだけの待遇もしくは事業の魅力が必要です。
この場合の待遇とは給与だけに限りません。テレワークや時短勤務など働き方の面でも、スキルが高い人であるほど選択肢が広がっています。そういった働き方でもタスク管理や評価をしっかり行える企業でないと、力を発揮してもらうことは難しいでしょう。
メンバーシップ型雇用が向いている企業や職種
以下のような企業は、ジョブ型雇用よりもメンバーシップ型雇用のほうが向いています。
メンバーシップ型雇用が向いている企業
- ゼネラリストが欲しい
- 転勤や異動が多い
- 社内教育に割けるリソースがある
- チームワークを重視する
転勤や異動が多い場合や、自分の業務以外にも幅広く目を向けて欲しいという場合は、メンバーシップ型雇用のほうが向いています。
また専門スキルを磨くよりもひとつの会社でじっくり働きたいという求職者とも、メンバーシップ型雇用は相性が良いスタイルです。
ただし未経験者や経験の浅い人材が集まりやすいため、教育のコストはジョブ型雇用よりもかかります。
さいごに
働き方改革の一環としてジョブ型雇用に注目が集まっていますが、ジョブ型雇用にもメンバーシップ雇用にもそれぞれ利点と難点があり、どちらが優れているというわけではありません。
会社の方針や欲しい人材のタイプによって適切な働き方は異なります。ぜひ自社に合うスタイルで人材育成に取り組んでください。