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偽装請負とは? 判断基準と偽装請負をしないための注意点

それぞれの業務に特化した業者への請負は、社内業務の効率化だけでなくクオリティの高い成果物も期待できます。

しかし請負という契約形態について理解していないと、「偽装請負」という判断をされてしまうケースがあります。

偽装請負とは

偽装請負とは、請負契約でありながら実態としては請負ではない勤務体制や管理が行われていることを指します。

そもそも「請負」って?

「請負」という契約については、民法で以下のように定義されています。

当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対して報酬を支払う契約

(民法より引用)

完遂した「結果」が納品物なので、業務の遂行方法について発注側が指示することはありません

たとえば家を作るという請負契約を結ぶ際には、家の仕様や納期を決めて発注します。しかし、大工の人の勤務時間などについて、発注側は指示を行う権限を持ちません。


■「労働者派遣」に該当するパターン

まずは「労働者派遣に該当する」パターンです。

業務のアウトソースを行う際にもっとも気をつけなければいけないのがこのパターンで、契約した請負業者が偽装請負をしていた、というケースが該当します。

労働者を派遣労働者として第三者へ派遣するためには、「人材派遣業許可」が必要です。また労働者と雇用契約を締結し、各種社会保険にも加入させなければなりません。派遣先との就業条件の調整も派遣元企業が行います。

しかし請負契約であれば、社会保険への加入も就業条件の調整も必要ありません。

そのため、実際は人材派遣(=雇用契約が必要)であるにもかかわらず、「請負」という契約にすることで社会保険料の負担や規制を免れようとするのが偽装請負です。


■「被雇用者」に該当するパターン

もうひとつは「被雇用者に該当する」パターンです。これは本来雇用契約を結ぶべき勤務体系であるにもかかわらず、請負の契約を結ぶケースです。

たとえば以下の条件に該当する場合は、「請負」ではなく「被雇用者」としてみなされます。

  • 出退勤時間や休暇取得の管理を行う
  • 日報など業務内容の報告を求める
  • 就業規則を適用する など

偽装請負の判断基準

偽装請負の判断基準については、厚生労働省より「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準を定める基準(通称:37号告示)」が告示されています。

この告示の中で、「全てに該当しない場合は人材派遣である」と例示されている条件を抜粋します。

  • 業務の遂行方法について自ら管理を行うこと
  • 労働者の勤怠管理を自ら行うこと
  • 必要な資金について自らの責任のもとで調達すること など

つまり「請負業者や請負業者の社員に対して発注元が業務の遂行方法などを指示することがあれば、それは請負ではなく人材派遣である」ということです。

偽装請負の問題点

なぜ偽装請負が問題視されるかというと、請負契約には労働者の保護がほとんど適用されないからです。

たとえば雇用契約の相手方は「労働者」であるため、原則として社会保険の対象となり、雇用する者が保険料の一部を負担します。しかし請負契約の相手方は「事業主」であり、保険料の全額が事業主の負担になったり、保険自体に加入できないこともあります。

そのため業務で怪我を負ったり失業したりした場合に、本来受けられるべき補償が受けられなくなる危険があります。

また成果物に対する瑕疵については、請負契約の場合は請負業者が責任を負います。雇用者であれば本来は雇用主である会社の責任になりますが、「請負」の契約体系をとっていると作業者の責任とされることになりかねません。

偽装請負の罰則

偽装請負を行った場合、以下の罰則が想定されます。

○労働者派遣法

無許可で人材派遣を行ったことに対する罰則として、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金が課されます。

○職業安定法

労働組合等のみにしか許可されていない「労働者供給事業」を行ったとして、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金が課されます。

この規定は、請負側だけでなく発注側も対象となります。

○労働基準法

法で禁止されている「中間搾取」を行ったとして、1年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金が課されます。

職業安定法に基づく罰則と同じく、発注側にも適用される罰則です。

偽装請負に加担しないためには

たとえ過失であっても、偽装請負と判断されれば行政処分や罰則を受ける可能性があります。

偽装請負にしてしまわないために、以下の点に注意しましょう。

■業務の遂行について指示をしない

業務の遂行方法について発注側が指示をすると、請負ではなくなってしまいます。請負業者の社員が発注元に常駐している場合などは特に注意してください。

また実作業者だけでなく請負業者に対して指示をすることも避けましょう。請負業者が発注元からの指示を受けて請負業者の従業員がその指示に従った場合も、「業務の遂行の指示」にあたります。

■勤怠管理をしない

請負業者に対して出退勤や休暇、休憩時間について管理を行なってはいけません。

発注した業務の進捗について確認することは必ずしもNGとはいえませんが、業務日報の提出などは避けましょう。

さいごに

請負という契約自体は決して悪いものではありません。しかし運用方法を誤ると、働いている人にも自社にもダメージを与えかねないものです。

業務のアウトソーシングを検討する際には、請負、派遣、委託など実態に合わせた方法を選ぶようにしましょう。